皆さんは「児童文学」と聞いて、どんな本を想像しますか?
ほとんどの方が「絵本」と答えるのではないでしょうか。
その回答は一部正しいですが、実はそれだけではないのです!
今回は知っておくと周りと差をつけられる、正しい「児童文学」の定義と、20年の筋金入り児童文学オタクの私、浅葱がおすすめする衰えない児童文学作品をご紹介します!
児童文学とは
児童文学とは、ズバリ「児童向けに書かれた文学」の総称のことです。
要は、大人が子供ために書いた文学の全てですね。
「そのまんまじゃん」と思ったそこのあなた!
そうです。そのままです。
ではそんなあなたに、この問いを授けましょう!
ここでクイズ!
「児童」は何歳〜何歳までを指すでしょうか?
- 0〜3歳の赤ちゃん
- 3歳〜5歳の幼稚園児
- 6歳〜12歳の小学生
- 13歳〜18歳の中学生・高校生
正解は・・・・・
0〜18歳の子どものことを指します!(諸説あり)
上記の選択肢は全て正解です。
当たりましたか?^^
「諸説あり」と書かせてもらいましたが、実は法律によって定義が異なるのです。
子どもに関する法律の多さもびっくりですが、法律ごとにも児童の定義が違うのも意外ではないでしょうか。
法律の役割が違うので、対象となる児童も変わるのでしょうがないと思いますが、こんなにも意味が曖昧なんですね。
ちなみに調べてみた際には、児童文学における児童の定義は「幼児〜15・16歳」や「6歳〜12歳」とする場合も出てきました。
それだけ曖昧なので、ものすごく正しく表現するなら「0歳〜10代の子ども」とするのが良いのかもしれません!
さて、話を戻します。
これを元に再度、児童文学を定義すると「0歳〜10代の子どもを対象に書かれた文学の総称」と言えるのでないでしょうか。
つまりは、絵本以外の文学も対象に入ってくるということです!
絵本以外にも!?児童文学の種類を徹底解説
文学の中にも小説、詩、戯曲、エッセイ、評論などと分類分けされるように、児童文学の中にもさまざまなジャンルがあります
対象年齢で分けると
- 幼年文学
主に0歳の赤ちゃん〜6歳の小学校1年生までの幼児を対象とした文学作品、主には絵本や易しい童話を指します。
例:いないいないばあ(文:松谷 みよ子/絵:瀬川 康男、童心社)、
ぐりとぐら(作:なかがわ りえこ/絵:おおむら ゆりこ、福音館書店)など - 児童文学
6歳〜12歳頃までの子ども(小学生)を対象とした文学作品を指します。
絵本ではないが挿絵が中心の本から、徐々に挿絵が少ない小説などに移行していきます。
例:「かいけつゾロリ」シリーズ(作・絵:原 ゆたか、ポプラ社)、
「黒魔女さんが通る‼︎」シリーズ(著:石崎 洋司/絵:藤田 香など、講談社)など - ヤングアダルト(YA)文学
12歳から18歳までのティーンエイジャー(中高生)を対象とした文学作品を指します。
例:ライ麦畑でつかまえて(著:J・D・サリンジャー/訳:野崎 孝、白水社)、
カラフル(著:森 絵都・文藝春秋)など
あなただけに話したい!あさぎの雑学
〜子どもはいつから絵本が楽しめるの?〜
最短という話であれば、おおよそ2〜3ヶ月を経過した後からと言えるのではないでしょうか。
赤ちゃんの視力は、おおよそ下記のように成長していくと言われています。
- 生後0〜1か月ごろ:光の感知や「何かが動いた」というのが分かるくらい
- 生後1〜2か月ごろ:人と目が合わせられる(注視)ようになる
- 生後2〜3か月ごろ:赤や緑の識別や、人や物の動きを追う(追視)ができるようになる
- 生後3〜4か月ごろ:青や黄色の識別、物の奥行きが分かるようになる
なので、色やものを見るようになる2〜3か月あたりから、少しずつ楽しめるようになるんじゃないでしょうか。
ちなみに、この時期の絵本はストーリーよりも、図形・絵などの視覚の楽しさに特化したものや、言葉の響きで楽しめるようなものを選ぶと良いです!
なお、赤ちゃんが簡単な言葉を理解し始めるのは、9〜10ヵ月くらいと言われています。
この時期からは言葉遊びのように何度も繰り返す絵本や、食べ物や乗り物などの身の回りのものを扱った絵本などもおすすめです。
ここでの注意は、「絵本の最初から最後まで必ず読み切る」と思わないことです。
この歳のお子さんの絵本は物語を楽しむことではなく、遊びです。
遊びなら途中でやめたって良いですよね!
お子さんのリアクションを見ながら、興味が無いようなら途中でやめても良いんです。
成長する中で楽しみ方が変わって読み切れるようになるかもしれませんし、実は好みが違うだけかもしれないですから、いろんな絵本を試してみてください
絵本で有名な福音館書店さんのHPには10歳向けの絵本の特集ページがあるので、絵本に困ったらぜひご覧ください!
補足ですが、赤ちゃんの発達はその子によって差があります。
あまりの成長の速さにカメラが欠かせない子がいれば、ゆっくりと親御さんと一緒に成長するのんびり屋さんもいます。
全然ハイハイをしなくて心配していたら、突如立ち上がる子もいるくらいです笑
なので、絵本との付き合い方も必ず「⚪︎ヶ月から・⚪︎歳から」という決まりはありません。
読み始めるは遅くてもいいし、なんなら絵本でなくても良いんです。
世間一般の常識からではなく、お子さん自身を見て選んであげてくださいね♡
内容のジャンルで分けると
作品によってはジャンルを掛け合わせているものもあるので、一概にはいえませんが、大まかには下記に分けられます。
- ファンタジー
魔法が存在したり、魔法が使える異世界などを舞台にした物語です。
例:「ハリー・ポッター」シリーズ(著:J・K・ローリング/訳:松岡 佑子、静山社)
「ダレン・シャン」シリーズ(著:ダレン・シャン/訳:橋本 恵/画:田口 智子、小学館) - ミステリー
日常のちょっとしたトラブルから殺人事件などを解く、謎解きをしていく物語です。
例:「おしりたんてい」シリーズ(作・絵:トロル、ポプラ社)
「名探偵夢水清志郎の事件簿」シリーズ(著:はやみね かおる、講談社) - 冒険物語
普通だった主人公が冒険を通じて成長する物語です。
例:トム・ソーヤーの冒険(著:マーク・トウェイン/訳:柴田 元幸、新潮社)
「ナルニア国物語」シリーズ(著:C.S.ルイス/訳:瀬田 貞二、岩波書店) - 伝記
歴史上の人物や現役で活躍されている方など、実在の人物の生涯を描いた作品です。
例:ヘレン・ケラー(監修:齋藤 孝/文:清水 あゆこ/画:應谷 瑞穂、ポプラ社)
せかいでさいしょにズボンをはいた女の子(作:キース・ネグレー/訳:石井睦美、光村教育図書) - ノンフィクション
史実や化学などをテーマに、実際の出来事や事実を元に創作された作品です。
例:窓ぎわのトットちゃん(著:黒柳 徹子/絵:いわさき ちひろ、講談社)
かわいそうなぞう(文:つちや ゆきお/絵:たけべもと いちろう、金の星社)
あなただけに話したい!あさぎの雑学
〜「ハリー・ポッター」シリーズって本当に子ども向け?〜
「ハリー・ポッター」シリーズといえば、映画が大ヒットして世界歴代3位の興行収入を記録、町並みやアトラクションで追体験ができるユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター™」エリアが話題だったり、映画で使用されたスタジオの再現や技術などを学ぶことができる「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が誕生するなど、完結した今でもファンを虜にし続ける超人気作です。
そんな様々なメディアや施設がきっかけでハマった皆さんが「原作を読んでみようかな」と思って本屋や図書館に行ってみたら、超絶分厚い本が目の前に・・・。
そこで気が遠くなった方も多いのではないでしょうか?
しかも児童文学作品なのに、本の中は挿絵も少なく文字がびっちり。
「こんな物理的にも精神的にも重い本、本当に子供が読めるのか?」と疑問に思った方もいるのではないでしょうか?
ですが実は、「ハリー・ポッター」シリーズの最年少読破記録は幼稚園児という話があります。
私は初めて大学で聞いた時、衝撃的でした。嘘でしょと。
今でも「きっとハジメちゃん並みの天才児がいたんだ」と思うことにしています←
また、「ハリー・ポッター」が出版されるきっかけとなったエピソードに、ブルームズベリー社の編集者が原稿を持って帰ってお子さんに読ませたら、読んだお子さんが絶賛したという話があります。
大人の想像を遥かに超えて、子どもが夢中になるパワーが「ハリーポッター」シリーズにあるということですね!
作品の形態で分けると
- 絵本
絵と文章によって構成され、どちらも合わさって成り立つ文学作品です。
原則として、形式的・内容的に絵の比重が本の半分以上を占めているということが決まっています。
まだ文字を読めない子どもにとっては、文字だけでなく絵からも情報を得ることで、読めなくてもいろんな気づきや発見を得ることができます。 - 童話
おとぎ話や昔話、寓話など、子どもに聞かせるために作られた物語のこと。
日本昔ばなしやグリム童話、アンデルセン童話などが有名です。 - 小説
物語を散文体で表現した文学作品のことです。
児童文学の場合、子どもたちが読みやすいように挿絵が多いものもあります。 - 詩
韻やリズムを重視した文学作品のことです。
児童文学でイメージしやすいものだと、童謡などではないでしょうか。
浅葱のおすすめ・大人も楽しめる至宝の児童文学10選
疲れた大人の心も癒す・おすすめ絵本3選
絵の才能は思わぬところに「てん」
価格:1430円 |
この絵本の個人的なポイントは、好奇心を自由に発揮できる環境が感性を育むということと、子どもの表現を受け入れる大人の度量が必要ということです。
主人公の少女・ワシテは「てん」の制作を通して、創作意欲を爆発させていきます。
そのきっかけは、紛れもなくワシテの「てん」を作品として認めた美術の先生だと私は思うんです。
えてして美術の才能というのは、実際にあるものや人物をリアルに描く、いわゆる写実的な方が一般的には上手と言われると思います。
描く力を養うためには土台の一つに写実的に描くスキルが必要なので間違ってはないですが、美術の根本は「何を描きたいのか」、「それをどうやって表現するのか」ということを考える力ではないでしょうか。
子どもは親や先生など、周りの大人の反応を見ています。
どうしたら褒められるのか、どうしたら「すごいね」と言ってもらえるのか。
だからこそ、子どもがあるがままに描く環境は、大人が否定せずに受け入れてくれることが重要だと、私は思います。
親や先生など、子どもと接する大人にも読んでほしい、淡い水彩がカラフルで綺麗な絵本です!
作品の詳細
作・絵:ピーター・レイノルズ
訳:谷川 俊太郎
出版社:あすなろ書房
サイズ:高さ21cm×幅20cm
ページ数:32ページ
対象: 幼児(3歳ごろ)〜小学校低学年(6〜8歳ごろ)
あなたは与える人か、与えられる人か「おおきな木」
価格:1320円 |
この絵本のポイントは、「幸せとは何か」という定義は立場によって変わるということです。
この絵本は「与えられる少年」と「与えるおおきな木」を中心にストーリーが進んでいきますが、少年に感情移入するのか、おおきな木に感情移入するのか、年齢や立場によって分かれると思います。
そして、おおきな木を可哀想と思うのか、幸せな一生だと思うのかは、きっと永遠に決められないでしょう。
あなたは与えられる側になりたいですか? それとも、与える側になりたいですか?
ぜひ一度読んで、考えてみてほしいです。
子どもと一緒に読んで、話し合うのも楽しいかもしれませんね!
ちなみにこの絵本のもう一つの魅力は、訳者の一人に村上春樹がいること。
意外じゃないですか?私も大人になってから気づきました!
ぜひ村上春樹さんの本を読んだことがあるという方にも、読んでみていただきたいです!
作品の詳細
作・絵:シェル・シルヴァスタイン
訳:村上 春樹
出版社:あすなろ書房
サイズ:高さ23cm×幅18cm
ページ数:57ページ
対象:小学校低学年(6〜8歳)から
温かく教えてくれる死のこたえ「おじいちゃんがおばけになったわけ」
おじいちゃんがおばけになったわけ [ K.F.オーカソン ] 価格:1430円 |
この絵本の魅力は、「死」とは何か、そして別れの大切さを優しく教えてくれるところです。
主人公の少年・エリックはおじいちゃんを心臓発作で亡くすところからストーリーは始まります。
おじいちゃんが死んだことを、母には「天国に行く」と、父には「土になる」と教えられますが、エリックはどちらもしっくりきません。
でも同じように子どもに教えている大人は、みなさんの中でも多いのではないでしょうか?
「では、死はなんと説明すればいいのか」と思う方もいると思いますが、私も簡単に言語化できるものではないと思います。
でもこの絵本そのものが、その答えではないかと思うのです。
言語化できなくとも、読んでもらえればきっと伝わります。
そして「さよなら」が言えることが幸せであることを、噛み締められるはずです。
死は永遠の別れだけど、最後があるなら大事にしたい、そう思える絵本です。
作品の詳細
著者:K.F.オーカソン
絵: E.エリクソン
訳:菱木 晃子
出版社:あすなろ書房
判型:高さ25.7cm×幅18.2cm(B5判)
ページ数:32ページ
対象:小学校1年生ごろ(7歳)から
小学生向けと侮るなかれ!大人も楽しめる小説4選
滝のように泣ける子どもの絆「テラビシアにかける橋」
テラビシアにかける橋 (偕成社文庫) [ キャサリン・パターソン ] 価格:990円 |
この本を読むまでにお伝えしたいことは、もし途中で止まりそうになっても、根気強く最後まで読んでほしい!ということです。
この本の最大に魅力は最後の章に詰まっています。
ストーリーは主人公の少年・ジェスと転校生の少女・レスリーの日常なので、人によってはつまらなく感じてしまうかもしれませんが後悔はさせませんので、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
ネタバレになってしまうのでこれ以上は語りませんが、最後まで読むと最終章のタイトル含めて、この本のセンスに脱帽します。
私も初めて読んだ時、久しぶりに目が腫れるくらい泣きました笑
そして、この本のすごいところは、作者の息子さんの実話をもとにしたストーリーであること。
最後まで読むと、だからやたらとリアルなストーリーなんだと、本当に感心します。
涙が止まらないラストに、当時は「どうして」というクレームも多かったそうです!
本を読むのにハードルを感じる方は、実写映画がありますので、そちらもおすすめです!
この映画は2作品あるのですが、2007年製作された方にはストーリーのもととなった息子さんが脚本として携わっています。
最後まで読んだ方にはわかるこの感動を、小ネタと共にぜひ味わっていただけたらと思います!
作品の詳細
著者:キャサリン・パターソン
訳:岡本浜江
出版社:偕成社
ページ数:256ページ
対象年齢:小学校中学年(8歳ごろ)から
大人になったからこそ理解できる不朽の名作「星の王子さま」
価格:528円 |
はい、誰もが名前を知っているであろう、超有名な名作ですね。
でも、子どもの時に読んでみたけど、理解できなかった人がほとんどではないしょうか?
そうです。私も仲間です。
なんなら絵本も読んだことがありますが、冒頭の帽子?ヘビ?の絵の印象と、王子さまの絵がとても綺麗ということしか覚えていません←
そんな私が星の王子さまの虜になったのは、大学生になってからです。
きっかけも2015年に公開された映画「リトルプリンス 星の王子さまと私」でした。
ストップモーションシーンの予告映像があまりに綺麗で、ちゃんと原作を読んでからいこうと気合いで読み始めて、その時に初めてストーリーを理解することができました。
子どもの時に難しくて理解できなったという方も、再度チャレンジしてみてほしいです!
蛇足ですが、ストップモーションとは、静止している物を少しずつ動かして撮影し、動いているように繋ぎ合わせて映像を作る技法のことです!
「リトルプリンス 星の王子さまと私」では、星の王子さまの物語のみ原作の絵に忠実な人形やセットが組まれ、ものすごい時間をかけて作られた極上の映像です。
映画は賛否が分かれている印象ですが、私はその星の王子さまの物語シーンだけでも見る価値があると思います!
魅力は言わずもがなですが、超有名な名言「大切なものは、目に見えない」に全てが詰まっていると思います。
大人になるとみんな、自分たちも子どもだったことを忘れていくんです。
生きていくためには嫌でも仕事をしないといけないから、ストレスが溜まるし余裕も無くなっていきますよね。
心や視野が狭まればなるほど、当たり前にそばにいる大切な人、人生における目標、大切にしたい思いが見えにくくなります。
あなたの大切なことはお金を稼ぐことでしょうか?それとも会社で権威を持つこと?人に褒めてもらうことでしょうか?
星の王子さまと読むと、見えなくなっていた「大切なもの」を思い出させてくれます。
今の変わり映えしない生活が苦しい人や職場に行くのが苦しい人、人間関係に悩む人も、ぜひ読んでほしいです。
読むだけで心が軽くなる、超名作と言われるにふさわしい作品です。
作品の詳細
著者:サン=テグジュペリ
訳:河野 万里子
出版社:新潮社
紹介している形態:文庫
ページ数:160ページ
ジャンル:文芸作品、評論・文学研究
親友と人生を賭けた少年の生き様「ダレン・シャン」シリーズ
ダレン・シャン / 1〔小学館ファンタジー文庫〕 [ ダレン・シャン ] 価格:880円 |
小学校の時、図書館にずらりと並んでいた印象が強い方が多いのではないでしょうか?
私はその長さに読む気にはならず、実際に読んでどハマりしたのは中学生の時でした。
1巻が物語のプロローグになっているのですが、読むと一気に先が気になる序章となっておりますので、挫けずにぜひ一度お手に取っていただけたらと思います!
この物語には2つのテーマがあると私は思っていて、「ダレン・シャンの成長」と「親友・スティーブとの対立」です。
主人公のクモ好きな少年・ダレンは、親友の命を救うために半バンパイア(バンパイアと人間どちらの要素も持った状態)になって特別な力を手に入れますが、それまでは平凡な少年でした。
のちに主人となるバンパイア・クレプスリーのペットである特別なクモを盗む度胸はあっても、怖いものは怖いし、自分のせいでスティーブが倒れた時だって保身に走る、卑怯な面も持っています。
でもそれは人間なら当然の弱い面で、それがダレンが特別ではないこと、そして物語のリアリティを産んでいます。
それでもいろんな恐怖や葛藤を乗り越えて半バンパイアとなり、最後には大切な親友や家族などの大切な人を守るために別れ、クレスプリーの手下になる決意をするという、少年とは思えない成長ぶりが1巻から伺えます。
そして親友のスティーブは賢いですが、傲慢でプライドの高い少年です。
自分がなれなかったバンパイアになった裏切り者をどんな手段を使っても殺すと誓い、それに人生を賭けていくスティーブは、ダレンの宿敵となっていきます。
それでもダレンにとってスティーブは親友で、敵意を向けられてもかばうシーンが印象的です。
ダレンにとっては自分の人生を賭けて救った親友に命を狙われるという、悲しい誤解がずっと続くこととなりますが、その要素が今後ストーリーを大きく左右していきます。
ダレンはクレプスリーと共に旅に出る中でどう成長していくのか、スティーブとの因縁はどう繋がってラストを迎えるのか、ぜひ本編でお楽しみください!
作品の詳細
著者:ダレン・シャン
訳:橋本 恵
画:田口 智子
出版社:小学館
紹介している形態:文庫
ページ数:336ページ
ジャンル:ダークファンタジー
働く大人こそ読むべき不朽の名作「モモ」
価格:880円 |
きっと一度はタイトルを耳にしたことがあるのではないでしょうか?
「時間」をテーマに、人々の時間を盗んで生きる灰色の男たちと、大切な人の時間を取り戻すために戦うモモのお話です。
私が初めて「モモ」を知ったきっかけは、小学校の学芸会で上級生の劇を見た時でした。
子どもながらにとても印象に残っていて、原作が祖父の家にあったので一気読みした思い出があります。
本作の魅力は、時間は有限だったとしても、今、何を大事にして生きるのかを考えるべきだということです。
大人になればなるほど、先のこと考えて生きようとしがちではないでしょうか。
時間に限りがあるからこそ効率化を求めますし、将来安全に生きるために今を消化しています。
確かにそれも正しい行動だと思いますが、今この瞬間を楽しんでいるか、今一度自分に問いかけてみてください。
今、この瞬間にあなたのそばにいる大切な人と向き合っていますか?
今、この瞬間の時間だってすぐになくなる儚いものです。
無駄だと思えることが、案外あなたの心には必要な時間だったりします。
モモはそんな「非効率的かもしれないけど大切な時間」を思い出させてくれる一冊です。
定期的に都度読んで、大切してほしい考え方だと思います!
作品の詳細
著者:ミヒャエル・エンデ
訳:大島 かおり
出版社:岩波書店
紹介している形態:文庫
ページ数:432ページ
ジャンル:ファンタジー
青春を再度楽しもう!ヤングアダルト小説3選
「西の魔女が死んだ」
西の魔女が死んだ (新潮文庫 新潮文庫) [ 梨木 香歩 ] 価格:649円 |
訃報をきっかけに、学校に行けなくなった主人公・まいが田舎で暮らす祖母の家に居候する日々を思い返すところから始まります。
平成生まれの同年代の方なら一度は名前を見たことがある、超有名な本ですね。
本作の魅力は、「生きていく」ということを見直すきっかけになることだと思います。
自然の中で野菜や生き物を育てて生きている祖母に、魔女のなり方を教わっていく中で規則正しく生きていく「まい」。
作中で明確に語られることはないですが、生きていく意義と幸せの定義を、形ないままに教えてくれたよ宇田と私は感じました。
今の環境や生活に息苦しさを感じてはいませんか?
そんな人に一度は読んでほしい、心が軽くなる素晴らしい小説です。
作品の詳細
著者:梨木香歩
出版社:新潮社
紹介している形態:文庫
ページ数:240ページ
ジャンル:文芸
「カラフル」
価格:715円 |
天国にて抽選で当たった主人公が、「小林真」という別の体に入り、自分の罪を探っていく本作。
小林真は何者なのか、家族との関係、好きな人や友人など、真を知っていく中で、なぜ真は自殺したのか、そして自分の魂は何者で罪は何なのか、ちょっとずつわかっていく事実がだんだんと繋がっていくのが疾走感があ理、一気に読めます。
自殺を選んだ人間には原因がある。
でも、その時に死を選ばずとも少し視点を変えれば、違うことがわかることもある。
学校、家庭だけという学生には逃げ場がないように見えて、もっと他の世界があること、時間が経てば解決することがあることを、悩める学生たちに知ってほしいなと思います。
アニメ化、実写化しているのは知っていたのですが、今回記事を書くにあたって調べたら、三回も実写映画化していることを知って驚きました!
しかもそのうち一回は日本ではなく、タイでの実写化で、それだけこの作品の魅力が海を超えても理解されているというのがすごいですよね。
作品の詳細
著者:森 絵都
出版社:文藝春秋
紹介している形態:文庫
ページ数:272ページ
ジャンル:フィクション、小説
「かがみの孤城」
価格:1980円 |
「かがみの孤城」といえば、2018年に本屋大賞受賞、2022年にアニメ映画化したことで有名な文学作品ですね!
アニメ映画を最近視聴しましたが、個人的には高山みなみさん・梶裕貴さん・矢島晶子さんと一部の声優さんが超豪華で、どっぷり世界観に浸れるいい映画でした・・・笑
この作品は、学校に行けずにいた中学生の女の子・こころが鏡の向こうにある城で、同じ境遇の6人の中学生と出会うファンタジーミステリーです。
全員が学年は違えど中学生・だけど全員が何かしらの悩みや事情を抱えていて、城で過ごす中で少しずつ明らかになっていきます。
本作の魅力は城のトリックと、主人公・こころの変化ではないでしょうか。
物語を追っていくうちに、7人の中学生にとって他の子たちは仲間、城は逃げ場のようになっていきます。
こころも最初は心を閉ざしていましたが、事情を話したことで少しずつみんなと仲良くなっていき、みんなが頑張る様子を見て少しずつ現実でも行動し始めます。
すると、それまでは誤解していたことや変わったことが少しずつ判明していき、自分の力で自分の悩みと向き合っていくのです。
両親からのプレッシャー、勉強への悩み、いじめの苦痛、恋愛、部活がうまくいかないなど、10代の悩みは様々でしょう。
学校という狭いコミュニティの中にいないといけなくて、学校から居場所がなくなれば逃げ場がないように感じるあの視野の狭さは、10代特有なように感じます。
大人から見ると学校以外の世界の方が圧倒的に広くて、そこで上手くいかなくたって大丈夫と思いますけど、子どもからはわからないものなんですよね。
でも本作ではそうではなく、どの世代でも同じように悩みを持つ人はいて、逃げる場所はあると伝えてくれるような救いの物語だと言えるのではないでしょうか。
子どもたちそれぞれの事情や城の秘密など、綺麗な伏線回収と感動するラストが秀逸で、私はラストの先をもっと見たいと思いました!
作品の詳細
著者 :辻村深月
出版社:ポプラ社
紹介している形態:ハード本(文庫・児童文庫もあります)
ページ数:558ページ
ジャンル:ファンタジーミステリー、小説
まとめ:児童文学の魅力は、年齢関係なく誰もが楽しめること
児童文学のすべてに言えることは、子どもと大人どちらも楽しめる文学であることです。
私は大学生時代、児童文学の研究をするゼミに所属しており、さまざまな指定図書を読みました。
その中には小学生のときにも読んだ文学作品もありましたが、大人になってから読むとまた違った視点で読むことができ、その魅力に再度虜になりました。
「星の王子さま」のように、当時は良さが全くわからなったけど、大人になってからその魅力を理解できたものもあります。
大人になるにつれて身についた知識や、経験というのはどれだけ思考や感受性を育むのかということを、感じることすら面白いです。
また、幼稚園で子どもが読む姿や読み聞かせへの反応を見た際、なぜそんなに集中できるのか、そんなに楽しめるのかと不思議でした。
実は紙芝居を自作して子どもたちの前で披露したことがあったのですが、無知な私が表面だけ真似して作ったものが子どもに響くわけもなく、散々な結果になりました。
結構悔しかったですが、ダメなことをわかっていて経験させてくれた当時の先生には感謝しかありません。
その時初めて、絵本や小説には子どもが虜になる工夫が細かくあって、著者の方々が子どものことを考えて、研究して、その上でできているものなんだと気づくことができました。
何せ児童文学は子どもが著者である作品もありますが、ほとんどは大人が子どもへ向けて書いているものです。
「子どものときにこんな考え方ができたら」や「こんなに素敵なものを知ってほしい」という様々な思いで、できているものが多いのです。
確かにそれは道徳的で、啓蒙的で、綺麗事が多いかもしれませんが、子どものみならず大人になっても大切にしてほしい考え方・感情が詰まっています。
それを研究することすら楽しくて、これが児童文学の魅力なんだと思います。
他にもまだまだご紹介したい名作が山ほどあるのですが、それはまた別の記事でご紹介しようと思います。
この記事が「児童文学を読んでみようかな」と思って下さるきっかけになったら嬉しいです!